2020.03.02

◾︎イタリアン・シューズ ヘニング・マンケル 東京創元社

なんだか不思議な話だった。

北欧ミステリーの巨匠というから、ミステリーなのかと読み出したら。たいそう不可思議な物語だった。

主人公は元医師。現在66歳で12年前から祖父母が残した島に一人で住んでいる世捨て人。

彼はある事件のせいで医者を辞めた。その事件は後ほど明らかになる。

彼は生涯独身だったが、学生時代に恋人がいた。そして彼女を捨てアメリカに留学し、そのまま音信不通となった。

 

犬と猫と暮らし、週一でやってくる郵便配達夫以外には交流がない。

毎日の日課は朝起きて冷たい海に身を浸すこと!!! いやー。北欧の人ってすごいわ。


そんな彼の元に歩行器を使ってしか歩けないほど衰弱した女性がやってくる。それは昔別れも告げずに捨てた彼女だった。

 

彼女は付き合っていた時に彼がどこよりも美しいといった湖に連れていって欲しいという。彼女はガンで余命は短い。

彼女の願いを聞くため数年ぶりに島を出る主人公。

湖をみつけたあと、今度はさらに寄り道をしたいという彼女の言うままたどり着いた村にはトレラーハウスに住む風変わりな女性が

住んでいた。彼女は告げる。「この子はあなたの娘よ」

 

娘が暮らす村には、イタリアンシューズの名匠がいた。世界各地の著名人が靴作りを頼みにくるという。娘は主人公の靴を作ってもらうよう手配する。

しかし彼女と娘の性格はなかなか激しく、主人公は結局その村から二人を置いて逃げ出し島に帰る。

 

ただやはり彼の中で何かが変わっていき、長年心にひきづっていた事件の被害者である女性に連絡をとることにした。

その女性は水泳選手で腕にガンがみつかり、急遽代役で手術を引き受けることとなった主人公は助手のミスで健常な腕を切断してしまう。

選手生命を絶たれた彼女は今何をしているのか。

孤児や家庭に問題のある少女を引き取って面倒を見る施設を運営していることがわかり、訪ねていく。そこで暮らす少女にたちにも会う。

 

また島に戻った主人公の元へ、今度は施設であった少女がやってきて、なんと自殺してしまう!

 

こんなに長々とストーリーを書いたのは、実は主人公がよーわからん人で、話も「ええ、なんで!?」の連続だから。

 

とにかく主人公は逃げて逃げて逃げてばかりいる人なのだ。晩年にようやく恋人と娘に出会い生き直すことを考え始めるのだけど

でもなんだかどっかずれていて変な人。恋人も娘をはじめ女達もみんな変な人たちばかりだ。

 

共感はわかない。でも自分自身を顧みれば、変な行動、変な言説、変な感情に対して言い訳で取り繕うこともあるだろう。

わけわからん!と思いつつもなぜか最後まで読んでしまった。

 

 

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2020.02.16

◾︎スケアクロウ 上・下 マイクル・コナリー 講談社文庫

「真鍮の評決」にちょっとだけ登場したロサンゼルス・タイムズの記者ジャック・マカヴォイが気になったので読んでみた。

 

ボッシュ刑事やハーラン弁護士というコナリーのキャラクターの中では作者に近い人なのでしょう。

事件そのものはディーヴァーばりの猟奇殺人犯が登場するものでそれなりに面白かったけど、

こういう話はコナリーじゃなくてもよかった感じ?

まあその分、昨今の新聞業界の危機的状況とか、レイチェル・ウォリングとのあれこれとかも盛り込まれてはいたのですが。

ジャックさんは新聞社を辞めちゃったのですが、コナリーさんのように作家として成功するのでしょうか。

 

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2020.02.02

🔳真鍮の評決 上・下 リンカーン弁護士  マイクル・コナリー 講談社文庫

図書館の新刊本のところに置いてあったので新刊と思って借りたらリンカーン弁護士シリーズの2作目だった。

図書館に入ったのが最近だったみたい。

コナリー文庫本が次々と入ってくれるようになったのがありがたいです。

 

1作目も読んだはずだし映画も見たんだけどそれほど印象には残っていなかった。

でもこれはかなり面白くて2日で読んでしまった。

しばらく弁護士活動を休止していたミックが弁護士業を再開したと同時に知り合いの弁護士が殺され

彼が担当していた事案が全てミックに引き継がれることとなった。

クライアントのひとりであるハリウッドの新興スタジオのプロデューサーは、妻と愛人殺しの罪で起訴されており

数日後には裁判が始まるという。裁判の延期を提案するミックにプロデューサーは日程を変更すれば契約は取り消すという。

そして殺された弁護士の捜査にやってくるのはボッシュ。裁判はどうなる? 弁護士殺しの犯人は・・・?

 

映画好きになる原点が「12人の怒れる男たち」だっただけに、法廷モノってやっぱり好きだな。

陪審員選びから、検事と弁護士の弁論、判事とのやりとりなどが興味深い。ボッシュシリーズより実は好きかもしれない。

 

 

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2020.01.26

🔳ブックショップ ペネロピ・フィッツジェラルド ハーパーコリンズ・ジャパン

驚いた。こんな展開になるとは。いやいかにもイギリス的な展開なのかもしれない。

 

戦争未亡人のフローレンスは夫婦の夢であった書店を開くため、イギリスの海辺の片田舎にやってくる。

村に長年放置されていた「オールドハウス」を改修し、ようやく開業。

 

書店にやってくるさまざまな村人たち。借金の返済問題、店を手伝ってくれる女の子。

ナボコフのロリータの仕入れにまつわる話など芯が強いフローレンスがそれまで本屋などなかった村で懸命に働く姿が
丁寧にでも淡々と描かれていく。

フローレンスを目の敵にし、オールドハウスを「芸術センター」にしようと画策する村の有力者の夫人と

読書好きでフローレンスを応援する村の名士との対決がクライマックスなのだけど

その後があまりにもあっけなく・・・・。

 

 

これは映画化されたそうで、予告編を見るとキャスティングはとてもよさそう。

 

いやあ、それにしても。なんかもやもやします。

 

 

 

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2020.01.17

◼︎オーガ(ニ)ズム 阿部和重 文藝春秋

「シンセミア」「ピストルズ」に続く神町トリロジー完結編だそうです。

 

あー、えーと。そうですか。

ものすごいボリュームなんだけど、なんやかんやと読ませるところはさすが阿部っち って感じではあります。

そして読み終えた後のなんじゃこれ感もすごいです。

でもハッピーエンドでよかったですね。

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2019.12.30

◼︎セロトニン ミシェル・ウエルベック 河出書房新社

今年ラストの読書。

 

やっぱりウエルベックって変で面白い。

 

エリートの初老の男が鬱になって引きこもり、昔の彼女や友人たちのことを回想していく・・・。

主人公は農業関係の調査・広報の仕事をしていたという設定と、貴族の末裔である

学生時代の友人はで広大な地所と城を所有し、酪農を行っているけれどうまく行っていない。

友人の属する農業組合と保安部隊が衝突し、その友人はその場で自殺するという事件なども描かれ

恋愛小説かと思いきやフランスの農業事情について延々語られたり、プルーストやトーマス・マンの

小説論が出てきたりウエルベックらしいというか、妙な知識が色々差し挟まれる。

 

主人公は絶望のなかに生きているのだけどなんだかどこか滑稽。

同じように晩年を迎えている私もこれからに何の期待も希望も持っていないので気持ちは何となくわかる。

 

ヴァンダー・グラフ・ジェネレーターの名前が唐突にでてきたのが懐かしかった。

思わずYouTubeで聴いてしまった。

 

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2019.11.29

◼︎鹿の園 ノーマン・メイラー 新潮社 ノーマン・メイラー全集4

ノーマン・メイラー。

今この作家のこと知ってる人ってとても少ないかもなあ。

私がティーンエイジャーだった頃は大人気作家だったんだけど。「裸者と死者」が有名だけど読んだことはない。

マリリン・モンローの伝記本もセンセーショナルだったかも。

「鹿の園」は高校1年生くらいの時に読んだことがあったので再読になる。

 

なぜまた読み返したのかというと、最近友人とメイラーの話題になり「鹿の園」読んだ!

面白かったよね? という会話を交わしたことがきっかけ。

 

ハリウッドが舞台で監督や女優が入り乱れる話し。 確か「パーティー効果」という言葉というか事象をこの小説で知った。

ということくらいしか覚えていなかった。

 

面白かったはずだよね・・・と読み始めたけど あんまり面白くはなかった。

うーん。高校生に何が面白かったのだろうか。 物珍しさだったのだろうか。

 

 

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2019.09.13

◼︎書楼弔堂 京極夏彦 集英社

京極夏彦は物知りだなあ。

と、作品を読むたびによく思う。

 

時代は明治初期。旗本の跡取り息子だった高遠は今は失業中。

本好きでたまたま出会ったのが「弔堂」というおよそ本屋らしくない本屋。

古今東西、あらゆる本が揃いその人にとって「生涯の一冊」となる本を売る。

 

弔堂の主は京極らしく理屈で語る。私はこの理屈っぽい語り口が大好きで

読んでいて本当に楽しい。

 

弔堂が進めるその人のための本、そしてその人物は

芳年であったり、泉鏡花であったり、時に岡田以蔵であったり

ええええ、そんなエピソードが?という話が満載なので、本当によく知ってるよなあという

バカみたいな感想しか出てこないのだけれど

ちゃんと小説として話と絡んでいるのが素晴らしい。

 

そして常に「妖怪」愛に満ちいつもブレない京極夏彦は素晴らしい。

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2019.09.01

🔳麗しき花実 乙川優三郎 朝日新聞出版

昨年読んだ「画狂其一」以来、江戸琳派周辺に興味があるのだが、

この作品にも抱一や其一が登場すると知り、読んでみた。

 

主人公は蒔絵師の理野。松江の蒔絵師の家に生まれ、羊遊斎の元に修行に出る兄について江戸へ行く。ところが兄が急死し

理野は兄の代わりに蒔絵職人として使ってくれるように頼み込む。

修行先の工房で抱一や其一など多くの人と知り合い、蒔絵の腕と自分の作品への意欲を高めていく。

 

また理野を取り巻く女達も興味深い。

 

理野が住む工房の寮は羊遊斎の愛人胡蝶が仕切っている。胡蝶は三味線の名手でやがて羊遊斎から独立し
対等の立場で相対するところが面白い。

抱一の愛人 妙華尼、工房の先輩祐吉の愛人など、愛人ばかりなのだが

それぞれ気持ちの凛とした女ばかりで清々しい。

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2019.07.19

◼️黄金夜会 橋本治 中央公論新社

治さんの遺作だそうです。

 

金色夜叉を現代に置き換え、東大生貫一とモデルの美也の物語。

治ちゃんらしいといえばらしい。

 

貫一が創業する「わらじメンチカツ」のディテーィルがすごくて、ちょっと食べたいんですけど。

誰かやってみませんか。

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