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2010.06.23

■刺青とヌードの美術史 宮下規久朗 NHKブックス

「ウォーホル」に続いて宮下規久朗氏の美術論を。

考えていたのとは、全然違って(笑)刺青のところで、絶対、モローの「サロメ」が挙げられると思ってたんだけど。刺青に関しては日本の美術オンリーでした。

しかし、なかなか面白い論考でした。ヌードは西洋で作り上げられた「理想の美」。日本では心と体をひとつのものと見なすので、体のみを理想化するという考えは馴染まなかった。「ヌード」が輸入された明治時代まで(特に江戸期)は、庶民の間では「裸体」は、ごく当たり前の情景で、職人やかごかきなどは、当たり前のように上半身をさらしていた。しかし、これは風景の一部であり、見えているけど意識しないもの。眺めてはいけないものだった。明治以降、外国人が日本にやってきて、その裸体姿に驚き、政府は「裸体は恥ずべき風習」と取り締まったとか。
一方、「芸術」としての「ヌード画」が輸入され、日本人は見ることを恥ずかしがったという。
つまり、風景としての裸体は当たり前のものであったが、「裸体」をわざわざ眺める、見るというのは無作法なことであったのが江戸〜明治時初期の日本人の「裸」に対する認識だったという。

裸を見る行為は、例えば見世物小屋とかあくまで密室で行われるべきで、美術館のようなところで一般大衆に公開されるべきではないというのが人々の感覚だった。

この頃、日本の芸術家たちが「裸体」を描く為に苦労した例がいくつか紹介されているのだけど、興味深かったのが「生(いき)人形」という興行で展示された人形の数々。代表的作家である、松本喜三郎が熊本出身で、熊本に美術館があるようなので一度見てみたい気がする。基本的に木彫りなのだけど、安本亀八作の「相撲生人形」の迫力たるや、写真で見るだけでもすごい。日本の木彫技術の粋といえるかもしれませんね。当時、東京や大阪では60万人くらいの観客を動員したらしい。

あと、裸体芸術としての刺青の考察も面白かった。もともと浮世絵師が読本の挿絵として描いたキャラクターに施した刺青がセンセーショナルで、大流行したのが元だとか。

裏美術史というか、とにかくいろいろ新鮮でした。

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