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March 2005

2005.03.28

■僕たちの戦争 荻原浩 双葉社

これは、傑作ですよ。ぜひぜひぜひみなさん読んで!
時は2001年フリーターでサーファーの健太。19歳。居酒屋のバイトをケンカで辞め、ブラブラ中。恋人ミナミとも最近うまくいってない。ひとりやってきた茨城の海で大波にのまれ・・・。
時は1944年。吾一は「石部金吉」と呼ばれるほどの堅物。予科練卒の航空機練習生だが飛行訓練中に失敗し、茨城海中へ墜落・・・。
タイムスリップと心身入れ替わり。よくある話しだけど、これを同時にやってしまったところがポイント。「まじっすか〜?」と思いきり現代の若者健太が、戦時下の軍隊で生き残れるのか? 真面目一方の吾一が世紀末の喧騒の日本に適応できるのか? ふたりのそれぞれに視点から語られる感想や批評がいちいち面白い。
軍隊の体罰、弱い者いじめ体質について、また、現代生活のあまりの節操なさ放縦ぶりが批判も含めて語られるけど、説教臭くはない。特に吾一が携帯電話やコーラや渋谷の雑踏に驚くあたりはもう、マジ可笑しい。
そして登場人物の過去と現在が交錯していき、最後はどうまとめるかと思いましたが、いい感じに収斂しました。いやー泣いちゃいましたよ。ホントに、笑わせて泣かせてくれます。ミナミちゃんがまたいい娘なの。
いやー、萩原さん、ちょっと物足りないなんて以前書いたけど、すみません。これはホント素晴らしいです。

あんまり話題になってないのは、何故? タイトルがもうひとつなのと、出版社がちょっとマイナーだからでしょうか。

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夫婦善哉 松竹座

藤山直美、沢田研二コンビの「夫婦善哉」を大阪松竹座で見てまいりました。3年前「桂春団治」を同コンビで見て以来、松竹座は二度目。 ケチって3等席を買ったら、なんと真横の桟敷席。これがまた悲惨な席で、花道が全く見えません。のぞき込んでやっと頭頂部が除ける程度。舞台自体も下手はほとんど見えません。てなわけで当初からかなりつらい体勢です。
まあ「夫婦善哉」は森繁久弥と淡島千景の映画が有名で、しばしば舞台やドラマ化もされている。大店の若だんな柳吉と芸者あがりの蝶子の物語。頼りないけど優しい柳吉としっかり者の蝶子はキャラクター的に沢田さん、直美さんそれぞれぴったりではあった。
でもねええ〜。何かこの話し、どうよ? 妻も子もいる柳吉が蝶子とかけおちする。それはまあいいでしょう。でもその後も柳吉は勘当されたにも拘わらず、相も変わらず女遊びでお金を使い邦題。それで蝶子は苦労する。実家を妹の婿養子が仕切っているといっては当たり散らす。蝶子に苦労をさせてんのはあんただけだよ〜、柳吉。と異常に冷静に見てしまった。というわけで、なんだか話しに乗れず。ま夫婦の機微ってやつが実感できないんでしょうが。まだ春団治の時の方がよかったなあ。うむむ。それなりに笑って見てたんだけど。
あと、蛇足ながら、衣装がきれいで、蝶子の普段着の着物、芸者衆の着物の鮮やかな色遣いに妙に感心してしまった。
笹野高史さんが出演されていて柳吉と同級生の役。劇中で「え〜!? 同級生?見えない!!」と芸者衆が二人を見比べるシーンがあるのだけど実際、沢田さんと笹野さんは同い年。うそぉ〜。

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2005.03.25

■メリーゴーランド 萩原浩 新潮社

地方都市の公務員啓一は市の建設したテーマパーク「アテネ村」の再建室へ移動となる。しかし担当者たちはご多分に漏れずまるでやる気なく形式主義の典型。そこで一大発奮した啓一は、昔の劇団仲間の力を借りてイベントを企画するのだが・・・。
いやあ、大阪市のお役所仕事による累々たる遺産を身近にみてますから、そうなんだろうねーって思います。
「千年先までやってろ!」という啓一の心の叫びが哀切です。
これは「公務員」を糾弾してるんじゃなくて、一般の大企業でもありそうな話しなのではないのかなあ? 
なんか勤労者としてはほろ苦い読後感ですねえ。

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2005.03.24

■魔術師 ジェフリー・ディーヴァー

マジックのトリックに見立てた連続殺人事件。リンカーンとアメリアは女性マジシャン、カーラの助けを借りて犯人を捜査するが、何しろ相手はも超一流のマジシャン(イリュージョニスト)。年齢・性別・身長さえも偽る変装の名人。追いつめたと思えばスルリと逃げられ、息つく暇もないどんでん返しの連続。とまあ、こんな感じです。
面白いことは面白いですが、読み終わるとふーんそうだったのって感じで終わりでした。 まあ、エンターテインメンとしては上出来なんでしょうけどね。

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2005.03.23

■なかよし小鳩組 荻原浩 集英社

「オロロ畑」の続編でユニバーサル広告社の面々が再び登場。今回のクライアントはなんとヤクザの「小鳩組」。果たして小鳩組のイメージアップ戦略はうまくいくのか?というメインストーリーに主人公であるコピーライター、杉山の別れた妻の病気やひとり娘との交流といったサイドストーリーがからむ。荻原さんはこのサイドストーリがうまいんだなあ。離婚によりアル中寸前だった彼が、宣伝効果と娘のためにマラソンをはじめ、立ち直っていく姿がなかなか感動です。

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2005.03.15

□恋愛適齢期

ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンの熟年ラブコメディというのか。おとなの恋愛は面倒くさいのですね。自分の気持ちに自信が持てない。若い人の根拠のない自信と正反対だ。それにしても老眼鏡など小道具が生きていますね。久々に爽やか青年を演じるキアヌ・リーブスが意外とよかったよ。

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2005.03.14

■神様から、ひと言 荻原浩 光文社

これは面白い!!! 今まで読んだ荻原浩の作品中で一番面白かった。
大手広告代理店をやめて中堅食品会社に転職したものの社内プレゼンでのトラブルからお客様相談室に配置転換されてしまった涼平。ここはリストラ対象者の強制収容所だったのだ・・・。
この相談室の個性的な面々がやたら可笑しい。中でも篠原が最高。(奥田英朗の伊良部医師をちょっと思いだす、出色のキャラクター!)遅刻魔で、競艇狂いのいい加減な奴だけど、クレーム処理のプロ中のプロ。客あしらいの天才。彼のクレーマーへの対応はそのままマニュアルに使えそうだわ。
笑えてジンとくる・・という萩原浩の持ち味だけど、今まではもうひとつ物足らない気がしていましたが、これは大絶賛です。

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2005.03.10

■アラスカ物語 新田次郎 新潮文庫

廣川まさきさんの「ウーマン・アローン」。彼女がアラスカに行くきっかけとなったのがこの書のモデルとなったフランク安田という人物に魅せられたからだときいて、読んでみました。 タイトルは知っていたけど、ずっとアラスカ犬の話しだと思い込んでいたのです。(^_^;)
フランク安田さんという人は、明治時代に岩手の名家に生まれたものの15歳で両親を亡くし、外国船の船員となってアメリカへ渡り、エスキモーたちのリーダーとなった人。乱獲が原因で捕鯨ができなくなった海岸部に住むエスキモーたちを率いて内陸に移住させ「アラスカのモーゼ」といわれた人物。
氷海で立ち往生する密漁監視船から助けをもとめてひとりアラスカの氷原を行く冒頭から、抑制のきいたしかし丹念な描写でぐいぐいフランクという人物に引き込まれていく。妻ネビロ、金鉱師カーター、インディアンと暮らすジョージ大倉という日本人など、周囲の人物もまた魅力的だ。
それにしても氷原を1週間さまよい生還したり、金鉱を発掘するなんて、奇跡としか思えないことが2度も起こるというのはこの人の運なのか、粘り強さの賜物なのか。何にしろ凄い人物でした。フランク安田さんの偉業は語り継がれなくてはいけないと思います。

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2005.03.07

■エロイカより愛をこめての創りかた 青池保子

なんと20年以上も描き続けられている「エロイカより愛をこめて」。青池保子が初めて明かす制作秘話。
青池保子さんって私はほぼデビューの頃から読んでいました。でも途中でフレンドからマーガレットを読むようになって、フレンド組はあかぬけないイメージがあった。この本にも書いてあるけれど、青池さん自身も干されかかっていたらしい。
そしてフリーでプリンセスに描くようになって「イブの息子たち」でプチブレイク。わたしも友人に面白〜!とすすめられて読んではみたけど、絵が依然昔の少女漫画のりを引きずっていて、もうひとつ夢中になれなかった。その後「エロイカ」も初期の頃は「イブ」と同じ感想。でもやはりやっぱり少佐、なんといっても少佐。このキャラクターの登場で変わりましたね。これ以降は大ファンで今でも読み続けています。
青池さんはとっても真面目な方です。本当に「創りかた」が紹介されている構想〜シナリオ〜絵コンテから資料集めまで真摯に取組んでいらっしゃるようすがうかがわれます。
地元(?)ドイツでも紹介されているのにも驚き。映画化されたら面白いのになあ〜。
付録の大島弓子、大矢ちき、樹村みのりがゲストの漫画、懐かし〜。ちゃんと当時買ってました。

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■ローマ人の物語13 最後の努力 塩野七生

ローマ人の物語もついに13巻です。「最後の努力」ですよ。最後の・・。もう、ローマはローマではなくなってしまうのです。というかローマ帝国を生き延びさせようという努力がかえってローマらしさを無くしてしまう結果となってくるのですね。蛮族侵入に頭を悩ませた皇帝はローマを4分割して防衛する体制を整える。その後を引き継いだコンスタンティヌスは結局他の3帝を滅ぼし、首都をコンスタンティノープルに遷都し、皇帝の地位を強力にするためキリスト教を公認する。これは暗黒の中世へのプロローグだったのです・・・。
コンスタンティンの凱旋門の写真が掲載されていて、これが興味深い。3つの時期の壁画を一堂に見ることができるのだけど、明らかに古い方が技術も芸術性も高いのだ。時代を経るにしたがって退化しているって、恐ろしいことです。

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2005.03.03

□ライフ・イズ・コメディー 〜ピーター・セラーズの愛し方〜

ここんとこ伝記映画が大流行です。でもそれが俳優の伝記だとしたら・・・。しかもそれが100種類くらい顔をがあったんじゃないかと思われるピーター・セラーズなら? 

そう、こんな愛し方があったんですねー。どなたにもおすすめという映画ではないけれど、わたしは大好きでした。この愛し方が好きです。

何しろわたしの生涯フェイバリット映画のひとつである「博士の異常な愛情」のピーター・セラーズです。「チャンス」もよかったなあ。演じるのはジェフリー・ラッシュ。(じつはわたくしこの方のファンでもあります)ジェフリー・ラッシュもアカデミー賞主演男優賞を獲った「シャイン」から「パイレーツ・オブ・カリビアン」のバルボッサ船長、「クイルズ」のサド侯爵まで幅広い役を演じる俳優でまさに適役。キューブリックにひとりで4役(当初は4役の予定だった)演じろといわれたピーターより、さらに過酷なひとり6役をこなしちゃってます。(ピーター、父、母、先妻、キューブリック監督、エドワーズ監督。しかもピーター本にが何役にも化けてるわけで・・・)ちゃんとその人役の俳優さんがいるんですが、途中で入れ替わり、心情を告白するんですが、このスイッチがうまい。

50年代にラジオ番組の芸人だったピーターが映画に進出し、ピンクパンサーのクルーゾー警部として人気者になりながらも、4度の結婚を繰り返し、満たされることのなかった生涯を描いています。「僕は自分自身なんてない。空っぽの容器だ」という言葉が印象的です。これは何人でもなかった「チャンス」(事実上の遺作)の主人公チャンスに重なっていくのです。ラストで氷上を歩いて空を飛ぶシーンと重なりあってジーンときちゃいます。

全体に当時の風俗の再現ぶりが素晴らしいです。タイトルからして70年代ピンクパンサー風のアニメーションでわくわく。占い師に「B・E」(本当はブレーク・エドワーズ監督)と一緒ならあなたは幸せになれると吹き込まれて、いきなり「ブリット・エクランド」に夢中になるところは笑いが止まりませんでした。
当時の音楽の使い方も最高です〜。もちろん「何かいいことないか小猫ちゃん」も聴けます。
ジェフリー・ラッシュ以外の俳優もよいです。それぞれのそっくりぶりも楽しい。ソフィア・ローレン、ブリット・エクランド、キューブリック、ブレーク・エドワーズ、デヴィッド・ニーヴェン。そっくりかどうかわかんないけど、占い師(怪しさが最高です)、先妻もよかった。(エミリー・ワトソン、彼女を可愛いとはじめて思った)

ああ、何かもう、久々に好きな映画なので、書きたいことが満載でまとまらないよ〜。オフィシアルHPもすごく凝ってて楽しい!!

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2005.03.01

■雛の家 久世光彦 中央公論社

日本橋の老舗人形屋「津の国屋」の三姉妹、ゆり子、真琴、菊乃の恋模様を描いているのですが。時代は第二次大戦のちょっと前から始まる。いやあ・・・・・しかし、まあ極端な姉妹でありんす。長女は右翼、次女は朝鮮人の左翼、三女は使用人である人形師とできちゃうのです。まあ、久世さんらしいといえばらしいんだけど。三女を慕う人形師の鶴吉は口がきけない。しかも最後はあわあわの展開。(春琴抄ですなあ)なぜこれほどまでに鶴吉をいじめるんだああ。思わず「悪魔のようなあいつ」の血まみれ良ちゃんを思い出しました。ちなみ次女が生んだ娘の名前が良だったりします・・・。

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