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2004.10.22

■こころの王国 猪瀬直樹 文藝春秋

菊池寛といえば、大人気流行作家にして文藝春秋の創始者。しかしその風ぼうや振るまいには何ともいえない愛嬌が漂っていた。
菊池寛の秘書をしている「わたし」が見た菊池寛と文藝春秋について描かれる。語り手が女性で久世光彦さんの小説といっても通りそうな柔らかい文体です。彼女は菊池寛の愛人でありながら編集部の青年(朝鮮半島出身)と恋仲になるのだけど、この関係が興味深い。二人とも菊池寛を尊敬し、非常に大切に思っているのだ。青年は「わたし」が作品を通して菊池寛を理解していくためのガイド役でもある。こういう展開なので自然に菊池寛の生い立ちから不遇の学生時代のエピソードなど、分かりやすく読める。
で「こころの王国」とは? 結局漱石の「こころ」には「こころ」がなかったということですね。あれって、自分勝手に悩んで死んじゃう「先生」の物語でしたが、つまりそれは「高等遊民」の悩みであると。しかし現実にはまず生活があるのであって、文芸は生活の意志とともにあるというのが菊池寛の考え方であった。そして漱石作品に対峙するものとして短編集のタイトルを「心の王國」にした、ということらしいです。

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