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August 2004

2004.08.26

□誰も知らない

ドキュメンタリー風の撮影になってはいるが、これは一種のおとぎ話しかもしれない。感動したとかいう映画ではなかった。泣く映画でもなかった。というか、観客に対して安易に泣くことを拒否しているのだという気がする。彼らが泣くこともない。互いに感情をむきだしにすることはほとんどない。長男が弟や妹に対して少し声をあらげる程度だ。長男役の柳楽優くんはじめ、こども達がほんとうに自然で素直な芝居で、客観的にみれば悲惨としかいえない状況をごく普通の日常として描いている。冒頭、スーツケースと一緒にモノレールに乗る長男が映る。その顔は少し憂いがある大人びた表情だ。その後一年前のシーンに戻る。母と一緒に引っ越しあいさつに回る長男。その時の幼さの残る顔と現在の顔の落差にハッとする。

水道も電気もガスも止められ、公園で洗濯したり体を洗ったりする子供達。食べるものといえば顔馴染の店員が分けてくれる排棄する弁当や、カップラーメンといったものばかりだから、本当なら栄養失調になったりしているはずだ。服や部屋はボロボロになっていく過程が描かれているけれども、こども達は存外元気そうに見える。その辺がこれはおとぎ話なんだという気がするのだ。(純化された物語というような意味で)

何度かグッとくるシーンやせりふがある。コンビニの女定員が警察か福祉課へ届ければと言ったとき長男は「そしたら兄弟4人一緒に暮らせなくなる」と答えるのだ。途中からいじめで登校拒否の女の子が登場してくる。彼女もクラスから「誰も知らない」と宣言されたゆえに兄弟達に自然に溶け込んでゆく。彼女の存在がこの作品のおとぎ話度を高めているのかもしれない。

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□茶の味

のどかな田舎に暮らすとある一家。父・母・中学生の兄、小学生の妹におじいちゃんの5人家族。そして時々訪ねてくるおじさん。一見平凡ながら少しだけ変なそれぞれの日常を描く。脚本がすごくよく出来ている。
ただ単に日常のエピソード並べただけのようでいて、最後に全て合点がいく仕掛け。お父さんの仕事も、お母さんの仕事も、はじめは全くわからないけれど(って、わたしだけ?)台詞でわからせるのではなく、エピソードの積み重ねで明らかになっていく。極めて突飛なおじいちゃんの言動も、最後にそうだったのか〜とほほ笑ましく受け入れられたりね。なんだかやたらと豪華な出演陣+ゲスト陣の中、おにいちゃんと妹役のふたりの自然さがかった。

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■パンク侍、切られて候 町田康

この前の短編集「権現の踊り子」に「逆水戸」っていう水戸黄門のパロディが面白いなと思っていたのだけど、今回ついに長編時代劇が登場。
牢人掛十之進は新興宗教「腹ふり党」の脅威から藩を守るために雇われるが・・・。何しろこの世は条虫の腹の中。糞として体外へ排出されるため、腹ふれ腹ふれというのが教義の宗教。アナーキーで荒唐無稽な展開はさすがに町田康。と思っていたらちゃんとオチがついているというのも意外でした。

しかし、漢字、難しいよ〜。重畳、凝然、偏頗なんてみなさん読めました? 地名の様霊川、恵愚母も読めないよ。人名の江下レ、差オム、シトゲとかってのも理解不能〜(笑)

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2004.08.21

■逆転世界 プリースト サンリオ文庫

「地球市」と呼ばれる都市に生まれた青年ヘルワードは360マイル歳で成人として「未来測量ギルド」の見習い隊員として初めて外の世界へ出る。都市は北へ向かって常に動かなくてはならない。測量し、軌道を敷延し、時には橋をかけるためギルド員は全力を尽くす。止まってしまえばこの世界は恐ろしいことが起こるのだ・・・。
「奇術師」のプリーストの代表作といわれる作品です。
ダハハハ〜。いや、まいりました。プリーストってこういう人なのね。ひとつの世界を丹念に作り上げ、そしてブッ壊すというか。(←ネタばれ?)
まあ、こういう人だとわかっていたら「奇術師」もある意味納得の展開です。
最初に引用文があります。
いずこに目を向けようと/すべてが異なり、なのにすべて目新しくはない/もとより果しない労苦/誤てり果しない労苦 /サミュエル・ジョンスン
まさにまさに、この通りなのです。でも結構面白かったけどね。

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2004.08.19

□フォロウィング

「メメント」で話題になったクリストファー・ノーラン監督の長編デビュー作。
作家志望の男が小説のネタ探しに、ある男を尾行しはじめたところから話しは始まるのだけど、時間軸を前後させて構成しているので「おや?」「あれ?」「え!?」と一時も目が離せない。それぞれのシーンのつなぎ方が非常に効果的で、唐突に出てくるシーンやエピソードが要所要所で小出しに意味付けされていき、ラストに向かって全てがつながった時「おおおおお〜!やられた〜!!!」って気になります。
70分と短いのだけど、本当に全てのシーンに無駄がなく、すごく練られた脚本と構成であることが分かる。いやーお見事。
モノクロで全体のトーンもフィルムノワールっぽい雰囲気ですごくいい感じです。
「奇術師」映画バージョンはホントに期待しちゃいます。

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2004.08.16

□ゴーストワールド

最近、見たい映画は上映スケジュールがあわないので映画館へ行けてない。だからというわけでもないけど見るつもりだったけど行けなかった映画をちょこちょこレンタルして見ている。
「ゴーストワールド」もそのひとつ。ソーラ・バーチが女子高生、スティーブ・ブシェミ共演ということしから知らなかったのだけど、ジャケットを見て驚き。あ〜ら、ソーラと並んでいる少女はなんとスカーレット・ヨハンソン(ロスト・イン・トランスレーション)なのですね。へー。
ちょっと世間とはうまくいかない女の子の青春物語。等身大の青春がここにある!というキャッチフレーズですが、まさに。自分の高校時代をみてるかのようでした。(笑)そして彼女が恋するのはやはり世間とはあまりうまくいってなさそうな不器用な中年の独身男。でもいっつも変な顔のブシェミだけど、カッコよく見えました。
自分が何者なのか、何をしたいのかよくわからない苛立ちや無力感とか、そのくせ回りがみんなバカにみえてしまう傲慢さなどこの年頃の女の子の気持ちや行動が本当に丁寧に描かれています。原作はコミックらしいですが、アメリカにもこんな繊細な漫画があるのね。

イーニド(ソーラ)の世間からの浮き上がり加減を緑や紫や赤なんかのファッションで表現してて、彼女の部屋の雰囲気や色遣いなど美術が最高によかった。イーニドの顔が悪魔に見えるような時があるのだけど、メガネのフレームの影が蛾のような眉に映るようにライティングしてあるのです。ディテールのこだわりが半端ではありませんね。
くすくす笑えるシーンもとても多いのだけど、ちょっと苦い。ラストは解釈によっては哀しい終わり方なんだけど、うーん、わたしは希望的にとりたいです。
すごく好きな作品になりました。

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■人面町四丁目 北野勇作 角川ホラー文庫

人面を作っていたから人面町という名前なのだ。でも人面って一体なに?(^_^;) という、いつも通りノスタルジックでありながらホラーというほどではないのだけど妙な出来事が起こりつつ、なぜか主人公はいぶかりながらも無事息災なのがいいなあ。のほホラ〜って感じでしょうか。

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2004.08.12

■壬生義士伝 浅田次郎 文春文庫

浅田次郎にはどんだけ泣かされてきただろう。壮大なスケールの「蒼穹の昴」。あるいは会いたくても会えないはずの人との邂逅が切ない「鉄道員」。江戸弁の語りが心地よい「天切り松闇語り」。でも次第にその押しつけがましくも思える「泣け泣け攻撃」に辟易してしばらく遠ざかっておりました。今回久々に家族がよかったというので読んだのが「壬生義士伝」。色んな意味で浅田次郎の集大成といえるのでしょうね。
語りの上手さには毎回感心する「天切り松」だけど、どうしたって松だけの語りなので、だんだん飽きがくる。ワンパターンになる。そこで考えましたね。色々な人の証言を取るという形式にして、とにかく登場人物が語って語って語り倒す、まさに「伝」でありまする。「新選組」の吉村寛一郎という南部藩を脱藩した隊士についゆかりの人物が東北弁で、江戸弁で、関西弁で、いわずもがなのところまでも語る。これでもかとばかりにくり返す。くどいんだよ〜!!そういうところがあざといんだよ〜!!!!泣かせようとさせすぎ〜!!!とか思いながらも泣けちゃいます。電車の往復で1回は泣いてました。はい。
文武両道に優れた人物ながら足軽という身分のため出世できず、妻子に金を送るため脱藩して新選組に入る寛一郎。金のために汚れ仕事もすすんで引き受け「守銭奴」と陰口をたたかれることもあったが「おもさげながんす」(申し訳ない)が口癖の根は優しく朴訥な人柄。故郷に残した妻子のその後や南部藩の要職にある幼なじみ大野との友情物語ももうひとつの柱。そして最後の語り手である農学者と彼が取り組んでいる仕事があきらかにされて、寛一郎の魂が受け継がれていることを知るのです。ああ、感動。またしてもやられましたね。なんかくやしいけどさ。
いやあそれにしても飯嶋和一さんとは対照的だよねー。作風が(^_^;)
えと、ついでにこれまた家族が見たいというので映画版「壬生義士伝」まで見ちゃいました。まあこんだけの話を2時間ちょっとに上手にまとめてありましたよ。特に中井貴一=吉村寛一郎。これほどのハマり役はないですねー。(笑)字も似てるし。

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2004.08.08

■奇術師 クリストファー・プリースト 早川文庫

時間かかったんです。確かに厚い本なんだけどなんと5日もかかってしまいました。読んでると寝ちゃうんです、なぜか。全然ページが進まなかったの。
物語は新聞記者のアンドルーがケイトという女性に呼び出され、そこで彼と彼女の祖先は奇術師でライバル同士であったという話を聞く。彼らの売り物は「瞬間移動」のイリュージョンだった。ケイトはそれぞれの祖先であるボーデンとエンジャという奇術師の手記を彼に手渡し・・。以下それぞれの手記が明らかにする衝撃の事実とは!!! ホントに、最後は「えええええ!!!???」でした。
構成も凝っていて、読み返すとすごくよく練られているなあとは思うのですが、私には現在のパートがいらんような気がしました・・。二人の手記の部分だけで十分面白かったのでは。現在パートが入ったことでなんか混乱してしまったような・・。なんか私には合わなかったみたいなんです。すんません。小太郎さん。


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