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July 2004

2004.07.30

■黄金旅風 飯嶋和一 小学館

朱印船、奉書船貿易さらに「糸割符」なんて懐かしい言葉がでてきて、日本史の授業を思い出してしまいましたわ〜。
飯嶋さんの作品は基本的に、権力に対して庶民がどのように戦い、破れたかって話しなのですが、あまりにも淡々とした文章で、泣かせようとか、そういう作為が全然ないんですよね。もっと盛り上げて欲しいような木もするんだけど。でも最後には泣かされてしまいますが。そして何ともいえぬ寂寥感が・・。
江戸初期の長崎は海外貿易の拠点として賑わいをみせていた。私腹を肥やすために海外派兵を画策したり、切支丹弾圧に血道をあげる大名たちに対して、地元の民のことをまず先に考える代官平左衛門と火消し惣頭才介、そして鋳物師として天才的な腕を持つ真三郎。3人ともまたカッコよすぎるのよ〜。私利私欲がなく自分の技量を徹底的に磨き、己のすべきことをつきつめていく姿。でも真三郎なんて、いいのか、これで・・・? つらい。
あまりにも淡々と書かれているため、正直前半はちょっと退屈なところがありました。しかし中盤過ぎ、才介の黄糸の繭のエピソードを読んだ時はいつの間にか涙がじわ〜とでているのに気づきました。
「大愚を行う者は必ず大義を振りかざし、結果最も弱き者が悲惨を見ることとなる」そうなんだよなー。しみじみ今の世相を思いますね。

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2004.07.28

中島らも氏

中島らも氏が亡くなりました。先週、階段から落下というニュースをきいて心配していたのですが。
わたしは10年くらい前、失業しておりまして、暇にあかせてに彼の小説「ガダラの豚」を読んでみました。
「お、面白い〜!!」(笑) とても面白くてぜひとも感想を誰かと語りあいたくなりました。
しかし、こちらは失業中の引きこもりだし、回りには読んでいる人は皆無。そこで、入会したばかりのNiftyの読書関係フォーラムを見回ってみました。「ガダラの豚」は分類するならば「冒険家族小説であろう」と判断し「冒険小説フォーラム」に登録することにしたのです。以来このフォーラムで知りあった方々に刺激されて色んな本に出会うことができたというわけです。
そんなわけで、らも氏、特に「ガダラの豚」にはひとかたならぬ恩義(?)を感じております。あと「今夜、すべてのバーで」も好きですね。
一番最近読んだ氏の作品は「虹のオルゴール」だったと思うのですが。これは趣味性が強すぎるというか、私には困った小説でした。
ご冥福をお祈りいたします。

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2004.07.26

■エンプティーチェア ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋

ライムシリーズの3作目。今回はライムが手術を受けるためにアメリカ中部の町へ出かけ、そこで保安官事務所から誘拐された少女の行方を探す協力を求められるという設定。犯人は村人たちから恐れられている16歳の昆虫好きの少年で、誘拐だけでなく殺人容疑もかかっている。地元警察と一緒に少年を追うサックス。しかし・・・。
うむうむ・・。例のごとく後半はどんでん返し、どんでん返しで展開しておお〜、とは思わせるのだけど、前半はかなり退屈だった。誘拐した少女の居場所を少年がしゃべらない理由に説得力がないこと、そしてサックスの行動はあまりにも無謀でなんだか納得できないなあ。

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2004.07.22

□ベジャール・バレエ・リュミエール

ベジャールといえば「ボレロ」。真ん中のお立ち台に乗って、だんだんと盛り上がっていく音楽に合わせて体を揺らすように踊るあのバレエが有名です。この振付家ベジャールの新作「リュミエール」の制作過程のドキュメンタリーです。「映画監督になりたかったダンサー」それがベジャール。リュミエール=「光」がテーマそして映画の創始者リュミエール兄弟も。あとシャンソン歌手のバルバラ、ジャック・ブレルやバッハの曲が使われています。射ダンサーひとりひとりに振り付けるベジャール。ビジョンはあるが、それが形にならない苦悩。衣装の美しさと機能性。野外劇場で雨にたたられるリハーサル・・・。ラストは少年ベジャールがとんだりはねたりしている古い映像が流れます。モノクロフィルムの中で光に愛された少年って感じ。

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2004.07.20

■みんな誰かを殺したい 射逆裕二 角川書店

第24回横溝正史ミステリ大賞優秀賞+テレビ東京賞をとった作品だそうです。

殺人事件を目撃してしまった青年と女性。交換殺人を持ちかける男。愛人が事故死して慌てる男。一見バラバラないくつかの事件がいったいどうからんでくるのか。会話も洒落ているし、ちょっと伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」を思いだすような展開で、なかなか面白く読めました。テレビ東京賞ととったので、ドラマ化されるらしいです。
でもそれよりもなによりも一番面白かったのは、選考委員の評でしたねー。
評価する作品がバラバラで、内田康夫さんはこれをイチオシされてたのですが、他の委員があまり評価してない・・・。私は選考委員として自分は向いてないようだ・・・と、退任されることになったらしいです。(それだけが理由じゃないけど)
しかし「射逆」って、ペンネームですよね? この方、いいんでしょうかこれで。

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2004.07.19

□ギャングスターNo.1

なんか久々にレンタルしてみました。ちょっと気になっていたポール・ベタニーの出世作とかいう噂を聞いて手に取ったコレ。ギャングの一代記で、若き日をベタニー君、現在をマルコム・マクドウェル、ベタニーの憧れのギャングにデビッド・シューリスというくせもの揃いの顔合わせ。
まあ、話はうーん、って感じですが、映像がスタイリッシュですわね。とにかく狂気のベタニーを見る映画です。目がなんともいえん。そういえば骨張った輪郭とか、冷酷そうな青い目はボウイに似てますねえ。歯並びがちょっと乱れているところなんかも。あと、マルコムさん、なんかスティングに似てたし。

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2004.07.15

□スパイダーマン2

ええ〜? ちょっと期待外れだなあ。パート2にしては評判がよろしいようなので、かなり期待してたのに・・。なんで? 「スパイダーマン1」の摩天楼を飛び回る映像の疾走感は新鮮で、爽快で、前作は本当に楽しく気持ち良くみたんですが。
ヒーローであることに悩むスパイダーマン。テーマはよいし、その面では面白かったけど、何より、今回悪役となるドク・オクが全然魅力的じゃないこと。オクトパス状のアームと合体した造形。つまんないよー。(マトリックスでも出てきたようなタコって、アメリカ映画は好きなの?)そんなわけでドク・オックとの対決が、う〜ん?でした。なんかねえ、長い手でもって破壊しまくるだけのマシンってのがイヤ。やっぱ悪役としては前作ウィレム・デフォーでしょ!グリーンゴブリンはサーファーみたいに飛び回ってて、最高。(笑)
それからどうしてもやっぱりイヤなのがMJ役のキルステン。あの娘はヒロインは全く似合わないよ〜。性格悪そうな三白眼(?)でヒロインの嫌みな友達役といったあたりが一番はまる人。早く自分の適性をわかってそういう道にすすんでいただきたいなあ。
エレベータやコインランドリーのエピソードとか、ウェッブが出なくなって思いっきりコケまくるとことか、地下鉄の乗客とか、相変わらず飛ばしまくってる編集局長とか、そして何より、トビー・マクガイアのうぶな表情とか、いいとこ、面白いとこはいっぱいあるんだけど、悪役とヒロインが私にはピンとこないため、前作よりいいと感じられなかったです。残念。
補足:オープニングもいいのよ〜。テーマソングにのってキャストと前作シーンがイラストで紹介される。ここはワクワクしたことを付け加えます。

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■石の猿 ジェフリー・ディーヴァー 早川書房

リンカーン・ライム4作目。私は「ボーン・コレクター」がそれほどいいとは思えなかったんだよね〜。何しろ犯人のボーンコレクターがお馬鹿すぎて。しかも骨収集家じゃなかったしい。でも2作目の「コフィン・ダンサー」はまあまあ。(3作目の「エンプティ・チェア」って読んでないなそういえば)。で「石の猿」はいいですねえ。面白い。今回はチャイナタウンが舞台で、中国からの密入国をあっせんする蛇頭のゴーストとライム・サックスの対決に、ゴーストを追っかけてきた中国警察のソニーが加わり、捜査に厚みが出たというか。そうそう。いつもの鑑識だけでの推理って、すごい無理あるよと思っていたのです。
ライムがよくなってきたね。人間的にいい感じです。ソニーとの友情が泣かせます。囲碁を教わったり、本に献辞を書いたりするのですよ〜。ハンディキャップのあるライムをそのあるがままの状態で受け入れるソニーの感性も素晴らしいです。

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2004.07.12

■昏い部屋 ミネット・ウォルターズ東京創元社

ううううう〜ん。何なんでしょう。途中で投げようかと思いました・・。こういうミステリーってもう読む気がしません。バラバラのジグソーパズルをあてはめていく感覚が必要なのでしょうが面倒だし、でもって最終的な絵が全然魅力的じゃないもん。登場人物がもう、みんな変でやな奴。主人公の女性が結婚していた男、婚約中の男どっちもサイテーなのね。(っていうか小説中で「ひどい、好きになれない人」って口を極めてけなされてる)なんか、こういう人物を好きになる主人公、ていう前提そのもので引きます。はあ。んでもって犯人は・・はあ!? とてつもなく疲れてしまいました。脱力しました。
でも、最後の1ページが妙に爽やか(笑)なので救いがあったというところでしょうか。

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2004.07.08

□ロスト・イン・トランスレーション

日本にCM撮影に来た有名俳優とカメラマンの夫に同行してきた若い女性が同じホテルで偶然知りあい、東京の夜を何日か一緒に過ごす。特に何も起こるわけではないストーリー。異国の地で知りあった男女のラブストーリーなんて考えれば山のようにあるのだけど、これは何も起こらないことが特徴なのかも。このCM撮影、妻からくるFAXや、宅急便、電話でやりとりするが深い倦怠がある。夫が出かけたあとパークハイアットの高層部屋に取り残される若妻。言葉での説明はほとんどなく断片的にシチュエーションと彼らの表情だけで孤独でつぶされそうな心情が迫ってくる。親子ほど年齢の違う二人。異文化とのディスコミュニケーションでよけいにその「lost」された部分がクロースアップされ、所在なさげな姿が際立ってくる。(単純に「異国の地」であればどこでもいいようなものだけど、この疎外感は東京が舞台だからこそ成り立ったような気がする。)女はこれから先何をしていいのかわからない。男はこれから先どうすればよいのかわからない。疎外感、孤独、焦燥・・・やりきれない。つまりこの映画は退屈だ。だって人生は退屈なのだから。

それにしても最後の歌は「はっぴいえんど」でしたよ。(カラオケ屋のシーンでも何気に流れていたんだけど)いや〜、やっぱり今聴いてもすごくよいね。ちょっと感動。

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2004.07.03

■チルドレン 伊坂幸太郎 講談社

家裁の調査員をやっている陣内を中心にした連作短編のような長編のような小説。陣内が破天荒で目茶苦茶なんだけど、憎めない面白い奴で陣内語録がぽんぽん飛び出してきて読んでて楽しい。
例えば「子供のことを英語でチャイルドと言うけれど、複数になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ」
「かっこいい大人がいれば子供たちはグレないんだよ」
(非行少年が更生するなんて奇跡なんだろう?ところが)「俺たちは奇跡をやってみせるってわけだ」
まだ学生時代の陣内が友人の鴨居と一緒に銀行強盗に出会い、盲目の青年永瀬と知りあうエピソード。家裁の同僚の武藤が陣内のアドバイスを受けながら持ち込まれた問題を解決していく話。陣内・永瀬・永瀬のガールフレンド、鴨居が脅迫事件の現場に出くわす話など、時間はあっちへ行きこっちへ行きしながら、陣内と父の確執が浮かび上がってきます。そして解決方は、陣内らしくて、ぷぷぷ。
ただこれを長編と言い張るのは無理があるんじゃないかなあと思ったりした。陣内を中心として短編集でいいじゃない? 「チルドレン」と「チルドレン2」のようなのをもっと書いてほしかったような気もします。

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■赤と黒 石田衣良 徳間文庫

「池袋ウエストゲートパーク外伝」とあるけど、直接は関係なくて、マコトの友人やくざの「サル」こと斉藤とキングが出てくる程度。主人公は34歳の映像作家小峰。ギャンブルにのめりこみ借金で首が回らなくなり、あるう狂言強盗の片棒をかつぐことになる。ところが・・。
ちょっと前に読んだ「LAST」でも似たような男達が出てくるのだけど、小峰はとりあえずの機転でLASTの男達とは違う結末を迎える。希望を感じさせる終わり方で、読んでいて救いがありました。

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2004.07.02

クラウディア 地球ゴージャス

地球ゴージャスというのは岸谷五朗と寺脇康文が一緒にやっている演劇ユニットなるものらしいです。母が「てるてる家族」を見て、岸谷五朗のファンになって「行きたい!」というのでおつきあいしました。
この二人が出演することと、サザンの歌を使ったミュージカルという以外、何も情報をいれずにみたのです。10列目という結構いい席で観ることができました。

舞台は近未来、ほとんどの人類が戦争によって滅びたため「愛する」という概念を奪われ、小競り合いによってエネルギーを発散している2つの国がある。敵国同士でひそかに愛し合うのは戦士と歌姫。つまりストーリーは簡単にいってしまえばロミオとジュリエット=ウエスト・サイド・ストーリーです。(トニー=寺脇、マリア=本田美奈子、ベルナルド=岸谷、アニタ=三咲レア)
衣装が素晴らしかった。着物を上手くアレンジして、黒をベースに色を使った衣装とゆかたみたいな柄でアレンジした衣装で2つの国を分かりやすく見せることに成功してました。(後で知ったけど、衣装は山本寛斎だそうで)。役者では初めてみたけど三咲レアという人、うまいなあと思ったら、宝塚出身らしい。やはり歌と踊りの基礎が違うんですね。身のこなしが飛び抜けてます。
歌はほとんどサザンの既存の曲をストーリーに無理矢理あてはめてるって感じ。大体、歌詞がわからないものも多いので(^-^;)どうなの?って(私は好きだからいいけど。一般的に)まあ、改めて桑田氏の曲の多彩さに感心しました。でもやっぱり桑田君が歌ってこそだよなあ。歌はどの役者も正直ちょっと・・。岸谷・寺脇氏はカラオケレベルだったよ。本田美奈子ははデビューした頃の衣装とおんなじね。ミニスカートとスパッツだ〜。
群舞の部分と殺陣がなかなかいいのでは・・・と思って見てたんですがクライマックスからラストにかけての展開はちょっと引いてしまって、なんだか醒めちゃいました。長々と書いたんですけど、結果的にう〜んって感じだったの。残念ですが。母は、楽しんでいたようです。

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