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April 2004

2004.04.27

■日曜日たち 吉田修一 講談社

お見事でした。
吉田氏お得意の現代の若者群像でありながら、それをつなぐ家出兄弟の物語をうまーくからませて、最後には爽やかな感動を・・。上手いですねー。素晴らしですねー。
でもなんだかキレイすぎるとちょっと物足りなく感じるの。それは吉田氏のせいではないけれど。
(つるつる読めて、行きの電車でほとんど終わりそうになったのでアセッた)

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2004.04.26

■ABC戦争 阿部和重 新潮社文庫

「アメリカの夜」に続く、2作目なのだそう。これは図書館になかったんで、文庫本で購入。そしたら「公爵夫人」と「ヴェロニカ・ハート」も一緒に掲載されてました。お得?
これは山形県=Y県を舞台にした不良高校生達の闘争を描いたものなのだけど、T高やM市のようにアルファベットで略されて呼ばれるかと思えば、湯村などの名前も登場し、抽象と具象が入り交じり、しかも「わたし」と戦争について手記を書いた筆者が混在し、語り手の混乱という手が用いられているので、無茶苦茶わかりにく書かれているのです。とはいえ、全体に面白いですよ。これは。

それにしてもで、阿部和重の本はどんどん読みやすくなっていくね。

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2004.04.24

■公爵夫人邸の午後のパーティ 阿部和重 講談社

タイトルのイメージはなんだか三島由紀夫風。はじめの文章もそんな感じなのだ。有閑マダムが「お楽しみ」を求めて公爵夫人邸の仮装パーティに出かける。でもその仮装は「セーラームーン」だ。一方女子高生が登場
するお話しが唐突に始まる。彼女ももちろん、セーラー服姿だ。というわけでこの2つの話しが交錯するような、しないような、実は同じ場所で起こっているのかもしれないと思わせるような、目くらましがあるのです。

「ヴェロニカ・ハートの幻影」は自殺のような事故で死んだ男の霊がついているというアパートに住む「瑕だらけの男」が主人公。女友達とその友人が現れるのだけど、どうも語り手がくるくる変わって、目くらましされ、一体、おまえはだれだ?って感じになるのであります。なんか、ゴダールあたりの映画のようかも。そうえいが「ポリー・マグーおまえは誰だ」って仏映画がありました。ヴェロニカといえば、ヴェロニカ・レイクという女優さんもいました。

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2004.04.22

■コンタクトゾーン 篠田節子 毎日新聞社

東南アジアへリゾート旅行に出かけた独身女性3人。医師免許を持つ大病院のお嬢様、祝子。外務省のノンキャリ真央子、派遣OLありさ。しかし政情不安の国で政変に巻き込まれ、逃げ出した後現地の村で過ごすが、暴動、独立運動、イスラム原理主義者の抑圧、ゲリラ戦などのなか生き延びていく姿を描く。

途中、リゾートホテルから脱出して島に流れつくところで漂流記ものなの?と思いましたがそれ以降は戦争物ですね。東南アジアの一般民衆の生活習慣と生き伸びる知恵が非常によく描かれていたと思います。その土地の風習をも踏みにじっていく権力争いの状況も。読みながらイラク情勢ともダブりました。救出された真央子が、日本に帰ってバッシングを受けるとこまで・・。

しかしー一神教ってやっぱり理解しかねるなあ・・・。八百万の神万歳。

こういうサバイバル物を読むと、いつも私は一番に死ぬよなあと思ってしまいます。なんの知識も技術もないですからねー。体力もないし。

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2004.04.19

■へのへの夢二 久世光彦 筑摩書房

結核療養中の晩年の夢二の2週間の出来事を描いた作品。
昔の女たち(死んだはずの人まで登場)に、療養中のお嬢様、村娘が夢二の周りに集まってくるという、幻想と現実の入り交じった不思議な久世ワールドが炸裂しております。
タイトルの由来は、花のお江戸じゃ 夢二と呼ばれ 郷里へ帰れば へのへの茂次郎 と本人が作ったというざれ歌より。茂次郎は夢二の本名なのだとか。
読んでると以前沢田研二が主演した映画「夢二」を見たくなっちゃいました〜。色っぽいんだ、これが。

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2004.04.15

□ディボース・ショー

軽〜く楽しめるコメディでした。
ジョージ・クルーニー、キャサリン・ゼタ・ジョーンズのゴージャスな配役がぴったりなのと、脇役が最高に可笑しい!! まさかジェフリー“バルボッサ”ラッシュが出ているとは知らなかったんだけど、可哀相にオーストラリアの馬鹿とか罵られちゃうなんて(^_^;)。そして、そういう役を嬉々として演じてるとこが好き。弁護士クルーニーのアシスタントの涙もろいおじさん、怪奇映画みたいな弁護士事務所のボス、探偵ガス・ペッチ、キャサリンの2度目の結婚相手、テキサスの大富豪ビリー・ボブ・ソーントン・・・などなど。
サイモン&ガーファンクルの音楽をうまく使ってました。はじめと終わりに「Boxer」Lie,Lie,lie 〜♪ですもんね。結婚式の牧師が「4月になれば彼女は」を歌いながら登場するとこも楽しい。「ディボース・ショー」ってタイトルもなかなか上手いと思います。(原題はなんと「堪え難き冷酷」つーの)きれーいにオチがつきました。

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2004.04.12

■葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午 文藝春秋

話題の本でしたが、はあ、なるほど、こういうことだったのですか〜(笑)
ありきたりのストーリーを、最後に設定を明かされて、改めて眺めると全く違う様相が見えてくるという仕掛けなんですね。「葉桜」の意味が明かされる最後はそれなりによい話し(^_^;)だと思いましたが、それにしても途中がいけません。後半が書きたいがための展開だとは思いますが、あまりにも退屈で、途中で読むのを辞めようかと思ったくらいでございます。うーん。
※主人公の名前がヒントなのか? 私くらいの年齢だと「驚愕!」にはならないんですよね。(わははっ)

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2004.04.09

■逃げてゆく愛 ベルンハルト・シュリンク 新潮社

死んだ妻宛てに元恋人から手紙が届く。それを読んだ夫は・・?「もう一人の男」。少女とトカゲの絵に隠された秘密は?「少女とトカゲ」。3人の愛人を持ち仕事も順調。そんな男の行く末は?「甘豌豆」ユダヤ系アメリカ女性とドイツ青年の恋はうまくいくのか「割礼」。統一後の東西ドイツの人々の感情の行き違いを描く「脱線」。内戦が続く南米で息子を思うドイツ人「息子」。定年後に夫婦で旅行中に、夢に何度も出てくる運命の女性にめぐりあった男「ガソリンスタンドの女」の7つの短編集。
ミステリー風あり、コミカルなものありで非常に面白いです。ベルンハルト・シュリンクってすごい作家だと思います。
男女の愛でも家族の愛でも、追いかければ、追いかけるほど、愛というものはその手の中から逃げていくものだと。知れば知るほど、相手は自分の思っている人間ではないことに気づいていくのだから。それでも追いかけずにいられない、知らずにいられないものなのですね。

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2004.04.08

■クレオパトラの夢 恩田陸 双葉社

「MAZE」で登場した女言葉をあやつる特異キャラ惠弥を主人公に据えた作品ということでシリーズになるのでしょうか? しかし、なんかまた、ベタなタイトルだよねー。正直言ってとりたててどうという話しではありませんでしたね。だから? で?
惠弥キャラが好きかどうかというだけかもしれません。私は白けます。どっちかってーと。恩田陸の少女漫画性が私とは共振しない感じだな。(私、少女漫画は愛しているけど・・・。微妙に好みが違うのでしょう)
ところで函館をH市と書く意図はなに? 

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2004.04.06

■クライマーズハイ 横山秀夫 文藝春秋

山岳小説と思っていたら「違うよ」と言われたので読んでみました。ジャンボ機墜落事故が起こった地元の地方新聞社が舞台。編集と広告、販売局との対立、全国紙とのスクープ、記者同士の争い・・さすが元記者だけあって締めきり前の緊迫感など現場の描写が見事。そんなに分厚いわけではないのに、実際の日航の事故とからめたストーリー。内容はぎっしり詰まっている感じ。読みごたえあります。

登場人物はヒーローではない。主人公悠木にしても、暗い生い立ちを背負い、息子とのコミュニケーションに悩み、社内でも少し浮いた存在。(そういえば、大事故の全権デスクというのに、結構よく雲隠れしちゃいますね〜。おいおい、早く職場に戻れよと、ツッコミを入れたくなる時もあった)
40歳を過ぎると、仕事でもだんだん先が見えて、あきらめとか妥協とか惰性とかで何となく動くいているだけになってくる。登山を約束した同僚の言葉「下りるために登るんだ」という言葉が最期になって効いてくる。「下りる」とは競争・対立・見栄・嫉妬・自己犠牲そんなものから抜けることなのだ。この歳になると、すごくよくわかります。

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2004.04.02

■トゥルー・ストーリーズ ポール・オースター 新潮社

ポール・オースターのエッセイ集です。いくつかのパートに別れていて、特に初めの「赤いノートブック」というのが面白い。一種のネタ帖のようなもので彼が見・聞きした「事実は小説より奇なり」という言葉がぴったりというか「ほんまかいな?」といいたくなるような驚くべき偶然がいくつも綴られている。 彼の小説「シティ・オブ・グラス」が間違いピンカートン探偵社への間違い電話で始まるのは有名だけれど、これも実際にあった話しなのだそう。 確かにオースターの小説には「そんな馬鹿な・・・」と思うような展開が平然と語られていたりするけれどオースターはそんな馬鹿な偶然は、結構起こると信じているのかもしれない。
「その日暮らし」というエッセイも楽しい。テーマはお金だ。お金が人生に及ぼす影響を、彼の若き日の貧乏暮らしの数々のエピソードを挙げて面白可笑しく時に哀しく語る。(「ジュネ伝」のところでも書いたけど、アメリカでジュネの通訳をした話しには驚き)。一番好きなのは野球カードゲームを「発明」した話し。こんなに熱くなっているオースターを見たことがない。(笑) いや〜やっぱり、お金って大切ね。
オースターの意外な一面が見えるので、ファンにはおすすめいたしますです。

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