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September 2003

2003.09.29

転落の道標 ケント・ハリントン 扶桑社ミステリ

これは面白い。市長の息子として育ちハンサムでスポーツマンの栄光につつまれた男が、いかに転落していくかが詳細に描かれる。
幼なじみの4人の男、みんなイブという女の子に夢中だった。彼女はその内のひとり保険会社を経営するフィルと結婚し、主人公である元ゴールデンボーイ、ジミーと不倫の関係にある。
ジミーは恵まれた環境にありながら大学卒業後のモラトリアムを伸ばしすぎ、結局フィルの保険会社で働くはめになった。営業成績もよくない。市長であった父は彼に、1銭も残してくれなかった。フィルは親の遺産で事業を引き継いだ大富豪だ。イブはジミーにフィル殺しを持ちかける。
小さな町で犯人と捜査官が幼なじみって「ミスティックリバー」(デニス・レヘイン)も似た設定だったけど、これもその濃密な人間関係のおかげで事件が二転三転する展開になかなかハラハラさせられ、ミステリ的にも満足できるのでした。
まあおそらく単になまけものだったんですけどね彼は。
妙にジミーに同情的になってしまうのは、わたしも同様になまけものだからなのか?

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2003.09.25

バカなヤツらは皆殺し ヴィルジニ・デパント 原書房

フランスの女性作家のデビュー作で自分で映画もとってしまったという。作者はなかなか美女で聡明そうな人だ。

内容はというと、二人の女の子がそれぞれ弾みで人を殺してしまい、その後二人で人を殺し回るというもの。

作家ご本人はとても上品で育ちのよさ気な感じの人なので、わたしこんなことも書けるのよ~~っと見せつけているようにも思える。

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2003.09.22

神様のくれた指 佐藤多佳子 新潮社

出所したばかりのスリ、マッキーは家族同然のおばさんがスリにあい、犯人を追いかけたところ反撃に合い、ケガをしてしまった。それを助けたのが性別不明の占い師マルチェロこと昼間薫。その後、二人の奇妙な同居が始まった・・。
読むまでは、マジシャンの話しかと思っていた。実はスリが主人公。いずれにせよ魔法の指の持ち主。不器用な私にはうらやましいです。(笑)
全編通してどっかほのぼの感があって、よいのだけど、随分まどろっこしい展開に思えるところもあった。そして後半は一転して人質を取った逃走劇になっちゃうのも唐突かなあ。
でも悪くはなかったです。別の作品も読んでみたい。

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2003.09.17

Cheap Tribe  戸梶圭太 文藝春秋

帯に「トカジがほじくり出す、できればなかったことにした昭和史」とあります。

できればよまなかったことにしたい、小説でした。

全編不快の塊です・・・。ゴミ、ゴミ。
こんなもん読みたくなかった。

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2003.09.16

Mr.クイン シェイマス・スミス 早川文庫

天才的な犯罪プランナーであるMr.クインが語る、完全犯罪。富豪一家の娘婿が家族を全員亡きものにして財産を奪い取る計画をギャングのボスに持ちかける。そしてその計画を立てるのはクイン。クインとボスの中は誰も知らないから、クインは絶対につかまることはない。事故にみせかけて殺す、精神的に追いつめて自殺させるなど用意周到な計画が練られていく。語りはユーモラスでというか、結構無駄口をたたきまくるクイン氏なのだが、やっぱり全体の構図を考えたときにあんまり後味はよろしくないような気がする。富豪のおじいちゃんなんて、本当にいい人だからねえ・・。
それに奥さんの姉さんが新聞記者で彼を追いつめそうになると、旦那を殺して脅迫しちゃうというのは、なんか信じられない・・。

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2003.09.10

漱石の孫 夏目房之助 実業之日本社

何しろ日本最大の文豪、漱石のお孫さんである。何しろお札になってしまったくらいの大有名人なのだから、その血縁だったりすると色々大変だったそうであります。若いころはやはり反発もし、関わりを考えないようにしていたけど、50を過ぎて自分にも孫が生まれることで、ようやく夏目家の血を考察してみたということだそうです。NHK「わが心の旅」という番組の取材で漱石が留学していたロンドンを訪ねる企画と本職の漫画評論の仕事で講演にでかけたことをからめて、自作の漫画も交えたエッセイとも評論ともつかない不思議な構成の本となってます。漫画と文学、対象は違えどそれぞれを分析していく探求心は同じなのでしょう。
それから、漱石のエピソードも面白いけれど、息子である(房之助さんの父)純一さんもかなり興味深い人みたいです。
ところで房之助さんって、母方のおじいさんも三田平凡寺という「奇人」として有名な人らしい。いやー、やっぱり血は水よりも濃しなんですかねえ。

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2003.09.08

分岐点 古処誠二 双葉社

UNKNOWN(アンノン)しか読んだことがなかったので、重い内容とトーンにちょっと驚いた。UNKNOWNではコーヒー好きの調査官がやたらお茶して、ほっこしりた雰囲気だったんだけどね。

敗戦の気配が濃厚となった夏、徴用された中学生はろくな食事も与えられず、兵隊からの鉄拳制裁におびえながら土木作業に駆り出される。だれもが疲弊し、戦争への疑問を感じていた。そんな中、ただひとり日本が正しいと信じる皇国少年がいた・・・。

戦争というのは食べ物との戦いであり、死ぬも生きるも運ということ。このあたりがリアルで「戦場のピアニスト」を思い出したりしました。

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2003.09.04

ZOO  乙一 集英社

まあ、色んなお話しが詰まってます。ミステリからSF、ギャグ調まで10作品。

「カザリとヨーコ」「冷たい森の白い家」は虐待児童反撃もの? これは乙一お得意の分野なのか? 
「ZOO」は映画「メメント」を思い出した。
「SVEN ROOMS」も映画「CUBE」風だけど、気に入りました。

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2003.09.02

いざ言問はむ都鳥 澤木喬 創元推理文庫

地方大学の植物学の助教授であるぼくの研究室の日々を描きながら、ちょっとした事件にまつわる謎を、同僚学者でちょっと変人の樋口が解明していく・・という連作短編。
大学の研究室という、まったりとした世界が独特で懐かしさを感じるよう。
先輩教授や学生、オーケストラのメンバーなどのキャラクターもみんなほのぼのとしているし、事件はどれも大事には至らないのだけれど、どうやら日常には危険があふれているのかもしれない。

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